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私の一番好きな唐詩

舞田正達


 田代さんから聞かれたでしょうが、老生、今度、九十四も長く生きた結びとして、「唐詩に遊ぶ」という冊子を世に送り、自らの記念としました。ただ、自分の考えで、少ししか刷らず、私と御縁の深いグループに少しずつ配り、皆さんで回覧して戴いています。でも、世馴れない自分の考えとは違って、"もっと刷れ!"、"こっちにも廻して"とか、賑やかなこと!有り難いことです。でも、"無いものは無い"のです。仕方無し。目をつむって下さい。
 その代わりに、お詫びかたがた、本当に私の一番好きな詩、今度の本にわけあって載せなかった詩をここに載せます。読んで下さい。一通りの解説もつけます。唐の詩は、現代のわが国の演歌のようなもの。そのつもりで気軽に味わって下さい。
 さあ、読んで、否、歌いましょうよ!御一緒に!

 李商隠、字(あざな)は義山。晩唐の詩人。艶麗な詩風をもってなる。その音調の整った象徴的な詩句の甘美なイメージはロマンの響をもって人の心をひきつける。宋代の初めには彼の詩風をまねて独特の詩が流行したほどである。彼は不幸な詩人であった。いつの世も同じであるが、執拗な政争の犠牲となり、進退を誤って一生不遇のままに、派閥の間を転々として終えた。この詩、彼が弘農尉として四川省巴山にあって、妻を遠い都に残し、孤愁をかこっていたときの作である。
 北とは北方(都)をさす。また、北は北堂といって、母屋の北にある堂をいい、主婦の居室をもいう。わが国の古典でも、北の方といえば、夫人の意である。

 良い歌でしょう。私は、この詩を読むと、なぜかしら、今は亡き母、姉、妹など亡くなった人々のことを思い出して悲しくなるのです。この苦しい世を生き抜くには、涙は駄目!だから、この詩、今度の本には載せなかったのです。僕って強いでしょう?
 人生は戦いです。思いはロマン!現実は戦い!これ、私の九十四の生き方です。お逢いしてお話ししたいですね。

(2003.9.11)


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